タイトルバックの後、3つの事件がうつります。はじめてみるときはわからないですけど、あとから見るとヒントがいっぱいです。
10月12日 ジェフリー・パターソン卿の事件 02:41からの場面です。まずは02:57ぐらいまでの事件前の被害者ジェフリー卿とPA(パーソナル・アシスタント)で愛人のヘレンとの会話。
英語のセリフ
JEFFREY What do you mean there’s no ruddy car?
HELEN He went to Waterloo, sorry. Just get a cab.
JEFFREY I never get cabs!
HELEN I love you.
JEFFREY When?
HELEN Get a cab.
字幕訳
ジェフリー 車が回せないか?
ヘレン 出払ってるの。タクシーを
ジェフリー 乗り慣れない
ヘレン 愛してるわ
ジェフリー 何の時に?
ヘレン タクシーに乗って
タクシーをさがしているらしき卿の姿がうつった後、薬がはいった瓶をまわす手がアップとなり、薬を口にはこぶ卿の姿がうつります。横たわり苦しむ姿に重なります。このあたり、次の二つの事件にも似たような撮り方をしてあって、事件の関連性をにおわせる演出になってます。
苦しむ姿に次のセリフが重なり、記者会見中のマーガレット・パターソンの姿となります。
Margaret Patterson My husband was a happy man who lived life to the full. He loved his family, and his work, and that he should have taken his own life in this way, is a mystery and a shock to all who knew him…
字幕訳 夫は- 幸せな人生を送っていました
家庭も仕事も順調でした
このように自ら命を絶ったことは-
私たちにとって大きな謎であり大きな衝撃です
一人で哀しみにたえるヘレンの姿となり、次の場面へ。
英語のセリフと日本語の字幕をくらべてもらったらすぐわかりますが、けっこう省略しています。スペースの問題とかいろいろあるのですけど、これだけ省略していても話はついていけますよね?He went to Waterloo,彼(運転手)はウォータールーに行きましたを、「出払ってるの」としていても、ウォータールーは特にここでは意味をもたないので問題ないわけです。When?を「いつ?」でなく「何の時に?」にしたのはとくに意味ないでしょう。訳者がこのやりとりを深読みしてニュアンスをつけたかったのかもしれません。
英語を聴き取るときに、全部聴き取ることが出来なければ、あわててしまいますが、キーワードをしっかりききとって文脈をつかんでいると話の大筋はついていけることが多いです。
What do you mean there’s no ruddy car?
表現
what do you mean…? どういう意味ですか、なに?つまりどういうこと?
これ、聴き取りにくいですよね。だけど便利な表現で、相手が先ほど行った言葉が理解できず、あらためて意味を聞きただすときに使います。meanで終わってもいいし、その後に、相手が言った言葉を付け加えることも可能です。
例文をあげてみましょう。
What do you mean you can’t come? 来ることができないってどういう意味ですか?
What do you mean by FIRE?FIREってどういう意味ですか?
ruddy (1)血色のよい、赤い、赤らんだ、(2)いやな、いまいましい と二つの意味があります。
この単語、知っている人は少ないです!以前、「赤」の意味と書いてしまいましたが、訂正で、(2)いやな、いまいましい のほうでしょう。迎えの車が来ていると思っていたのに、いまいましいことにきていないじゃないか、ぐらいの気持ちで行っているのじゃないかと。ヘレンが使った言葉である可能性もゼロではないですけど、おそらくジェフリー卿が自分で付け加えたのじゃないかと思われます。出張から帰ってきたのに迎えの車もきてないなんていまいましい、という卿の気持ちはでているかもしれませんが、特に大きな意味はありません。字幕訳でこの言葉が訳されていないのはそのせいかと思われます。
2 I never get cabs!
自分は~なんかしない!と英語でいうのってけっこう難しいと思うのですが、
そうか、neverをつかったら簡単に言えるんだ、と気づいたところです。neverって案外使わない単語だけど、使い方次第でそこそこ活躍する言葉になるのかも。
3 Get a cab.
ヘレンの最後のセリフ。繰り返しになるのでゆっくり言っています。一語一語ゆっくりいうと、aは[ei]になります。
4 a happy man who lived life to the full.
字幕訳 「幸せな人生を送っていました」
けっこう省略されて訳されています.
live life to the full 充実した[悔いのない]人生を送る、精いっぱい生きる
live life to the fullest が正式な表現です。記者会見で語られる言葉ですから、くずれた表現ではありますまい。辞書通りでないといけないような気になりがちですが、そうでなくてもOKなんだなあというのがよくわかります。
5 He loved his family, and his work,
英語の勉強とは関係ないのですけど、
字幕では「家庭も仕事も順調でした」
日本語版では「家族と仕事を愛していました」
この字幕版、when?の訳のみならず、この箇所でもなかなか個性的な訳をつけています。
一方、「~も順調だ」というときにloveを使って「~が大好きだ→(好きだから)順調だ」というロジックで表現できるのか?なんて考えないでもないです。
6 that he should have taken his own life in this way, is a mystery and a shock to all who knew him
take one’s own life 自殺する
同じ意味の表現 kill oneself、commit suicideなど
thatからway, までが主語です。thatからwayまでをitでうけて、次のようにいうこともできます。
It is a mystery and a shock to all who knew him that he should have taken his own life in this way.
話の流れより、「(人生を謳歌して仕事も私生活もうまくいっていた夫が)こんなふうに自殺するなんて、彼を知っている誰にとっても謎だし衝撃だ」という意味にとれると思いますが、学校で文法を真面目にやった人は
should have +過去分詞
~するべきだったのに(しなかった)という後悔や非難をあらわす
例 You should have finished the job. あなたはその仕事を終えているべきだったのに。
~のはずだという推量を表す。
例 She should have come here by now. 彼女は今までにここにきているはずだ。
ここで使われているshouldはこのどちらでもなく、「話し手の判断や感情」がはいるときに使うshouldです。
It is surprising that Mary should say so. メアリーがそんなことをいうとは(私
には)驚きだ。
()の部分は訳しませんが、ニュアンスとして入っていると思って下さい。
It is surprising that Mary says so. だと、話し手にとって驚き、というニュアンスはなくなり、客観的な事実として「驚きだ」とのべていることになります。
過去の動作に対するときは、should have + 過去分詞 となります。
It is surprising that Mary should have said so. メアリーがそんなことを言ったとは(私には)驚きだ。
この使い方では、判断とか感情を表すような言葉(surprisingなど)がはいっていることがポイントです。そう考えると、a mystery とか a shockが判断や感情を表す言葉にあたることに気がつかれるかもしれません。
7 (S) is a mystery and a shock to all who knew him..
このまま覚えてしまおうか、という表現。
a mystery and a shock to ~にとって謎で衝撃だ
all who knew him 彼を知っていた人全員
おそらく知らない人のほうが少ないmysteryとshockという単語を使いこなせるかどうかがポイントの一つです。あとどちらも数えられる名詞なのでaが必要です。とばしそう…
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